先生:君は今年もシングルベルかね。
○太郎:ああそうですよそうですともそれがどうかしたんですか。 

カマキリとの友情は物理学に勝るか


みなさんは子供のころ、ぬいぐるみや人形に話しかけていませんでしたか。


私は小さい頃、つらいことがあると野原にいって カマキリに話しかけていました。
”おわりの会”で袋叩きにあった後などはよく野原に行ったものです。


なぜカマキリに話しかけるのかといいますと、彼らはちゃんと
私の目を見て話を聞いてくれたからです。


今日おわりの会で・・・


彼らは私の
「何もわかってくれないんだ、大人は
などのつまらない話にも、そっぽを向くことはありませんでした。
彼らの大きな複眼の中の黒い瞳は、常に私のほうを見ていてくれたのです。


カマキリの黒い瞳
カマキリの黒い瞳


しかし小学校の中学年になったころから、何かおかしいと感じるようになりました。
そう、カマキリと目が合いすぎる のです。


またカマキリは 夜になるとサングラスをかけたように目が真っ黒になる のも疑問でした。
不思議に思った私は昆虫の目について調べてみることにしました。







昆虫の目は複眼といって、小さな目(個眼)が集まってできています。


複眼・個眼の構造
  左・・・複眼
中央・・・個眼の集まり
  右・・・個眼の断面図



そして個眼は網膜色素細胞の違いによって 連立像眼重複像眼 の2つに分かれます。
個眼には構造の違いによって色々種類があるのですが、ここでは網膜色素細胞の違いによる分類を挙げます。

連立像眼と重複像眼の違いは何かといいますと、重複像眼は暗いところでも ものがよく見えるということです。


連立像眼・重複像眼
左・・・連立像眼
右・・・重複像眼

重複像眼の網膜色素細胞は、暗くなると色素顆粒を角膜付近に移動させる事によって個眼間の仕切りをなくす


連立像眼では2つの網膜色素細胞が各個眼を完全に仕切っていますが、重複像眼では網膜色素細胞が個眼を仕切っておらず、さらに暗い所では細胞全体に散らばっていた色素顆粒が角膜付近に集まることで個眼の間の仕切りをなくし、光が視細胞にとどきやすくしています。


複眼が光を捉える様子
左・・・連立像眼の断面図。各個眼が仕切られているので、ほぼ真正面からの光しか視神経まで達しない
右・・・重複像眼の断面図。明るい所では連立像眼と同様。暗い所では仕切りが無くなるので多くの光を感じる事ができる


カマキリの目は暗いところではサングラスをかけたように青黒くなりますが、これは網膜色素細胞の色素顆粒が角膜付近に集まっているからだと考えられています。


では、カマキリのつぶらな瞳の特徴である、複眼の中の黒い点は何なのでしょうか。


これは偽瞳孔(又は擬瞳孔)と呼ばれています。
もう名前からして瞳孔であることを全否定していますが、
この瞳孔らしきものの構造はどうなっているのでしょうか。


物理学的に考えますと、太陽の光などの白色光には、あらゆる波長(色)の光が含まれています。
色のついているものは、その波長(色)の光だけを発しているわけです。


ここでもう一度上の図を見てみましょう。
カマキリの目は昼間緑色に見えますが、これはカマキリの目の中で散乱されて戻ってくる光の波長が緑色のものだけだからです。
そして偽瞳孔と呼ばれる黒い点からはあらゆる波長の光が戻ってきません。
上の図では、カマキリの場合視細胞に達した光が全て吸収されているものだと考えます。


偽瞳孔のイメージ
偽瞳孔のイメージ図(アシナガバチの巣)


  先生:どうしたんだね、今回はやけに難しい話じゃないか。
      やはりシングルベルの影響か。
○太郎:本編中に出てこないでくださいとあれほどr


つまりカマキリはいつもこちらを見てくれているのではなく、
全ての光を吸収している個眼が黒く見えているだけだったのです。
ああ・・・それでは私の子供時代のカマキリとの語らいは何だったのでしょうか。


しかしカマキリの目の構造がわかったとしても、
こちらをじっと見つめている(ように見える)カマキリに親しみを感じずにはいられません。
今でも野原でカマキリに出会うと、思わず
「本当はこっちを見てくれているんだろう?」
などと話しかけている23歳男(シングルベル)





※参考文献 斎藤哲夫(1996)『新応用昆虫学』朝倉書店261p
         三橋淳(2003)『昆虫学大事典』朝倉書店1200p
※もっともらしく書いていますが、間違いを含んでいるかもしれません。


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